といふわけで

目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず

通ぶってM-1グランプリ2018を語る その①

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「昨日の夜に『もしかして優勝できるかもしれない』と思ってた自分を殺したいですね。」(2004年/東京ダイナマイト ハチミツ二郎

  

 2001年島田紳助が「漫才に恩返しをしたい」と「芸人を辞めるきっかけを与える」ことを目標に企画されたM-1グランプリ。第一回から見ている私にとって、この日は一年で最も真剣に漫才を見る日となった。

 

 

敗者復活からみてゆっくりと気持ちを高めていき、いざ決勝戦。今大会も非常に高レベルな戦いとなった。

 

せっかくなんで、各コンビの感想でも書いてみる。

 

 

  • 見取り図 

トップバッターにしては…という見方もあるが、やはりM-1の経験不足感は否めなかった。ネタ自体は悪くないが、後のコンビと比べると審査員の塙が言ったように横の動きばかりで客に対するアプローチがなかったように思える。

 

最近この手の「ツッコミによって笑いを取るタイプの漫才」が多いが、もっとボケのパンチを効かせてほしい。例えば、フットボールアワーは後藤のツッコミに注目されがちだが岩尾もしっかりキャラを生かしてボケている。1+1を3や4にしていくにはツッコミの力量だけではしんどい。

マルコ牧師のくだり、非常に面白い仕掛けだが、種明かしはすぐにやったほうが客は混乱しなくていいかも。でもいいアイデア

「あたおか(頭おかしいの略)」は流行るかもしれない。

 

期待値が高かっただけに、ややガッカリした。「サイコパス」という設定にこだわりすぎて、笑いの部分が少なかったように思える。冒頭のボケは緊張と緩和がしっかり聞いていてすごくハマったが、パターンが一辺倒になっていたように思う。美味いところはあるんだが、爆発しなかった。ただ田中のメンタルは鋼。

 

話を徐々に広げていって後半にかけて盛り上がっていく、非常に面白い掛け合いの漫才だと思った。塙も言っていたが二人のパワーバランスが非常に良い。やっとm-1らしい漫才が出てきたと思った。個人的に、こういうやり取りの喧嘩漫才みたいなのがすごく好きなので、楽しんでみることができた。山内の感情表現は本当に素晴らしい。

コント王者なのにしゃべくり漫才っていうのがまたオツだ。

 

面白い、が好きじゃないネタだった。個人的にジャルジャルというコンビは本当に好きではない。ネタは面白いのだが、なんというか、無機質で機械的なのだ。

富沢はコメントで、二人の人間力が出るともっと魅力的になる。マシーンみたい。と言ったが、私が受ける印象もそれに近い。

ジャルジャルのネタはファッションでいうパリコレみたいなもので、「すごい!」

というのはわかるのだが、いざ自分がその服を着たいかと言われればそうではない。そういう印象を受ける。

「笑いは人ですよ。」と博多華丸は云っていたが、このコンビに足りなかったのはそこだと思う。

 

 

ジャルジャルの後だったから、というのもあるかもしれないが、M-1でやる漫才ではなかった。正月、コタツで寝転びながら見る漫才だ。M-1の制限時間内で笑いを取る、という漫才ではない。面白いのにもったいないなぁ~。

逆に言えば、こういうオーソドックスな漫才では勝ち抜けないほど、決勝戦はレベルが求められているのかもしれない。

 

  • ゆにばーす

前回トップバッターながら非常に客席が受けていたので期待したが、変な方向に尖ってしまっていた。なんというか、詰め込みすぎの印象。

遊園地ロケとカップルの喧嘩がごっちゃになってよくつかめなかった。とっちらかってる。審査後、テレビに出たらいけない顔になっていたのが一番面白かった。

 

  • ミキ

敗者復活の勢いそのままにスタートからギア全開で飛ばしていた。テンポの良さもさることながら、自虐ネタなのに暗さやトゲがなく、底抜けに明るい漫才だった。

ネタ構成かな。ジャニーズに履歴書送ったところからもう一ピークほしかった。

もっと深いネタが書けるようになれば大化けするかもしれない。早くも、来年の優勝候補だと思う。

 

  • トム・ブラウン

私的には平成最後の放送事故だったのでが、審査員の高評価に混乱している。

ハートの強さを感じるネタ。面白かった。でも今日で良いという松本のコメントが的確だと思う。最後謎の達成感すらあった。ボボボーボ・ボーボボのノリ。

山本一二三が土から出てくるネタはどこで見られるの?

 

勢いだけのコンビという印象だったが、今回は全部「ピシッ!」とハマっていたように感じた。

舞台を所狭しと動き回り、暴れるボケをしっかりとツッコミでまとめられる二人コンビネーションに舌を巻く。

前述したように、ツッコミにクセを出すコンビが多いが、ここはそレに対してボケが全く引けをとっていないので、ボケとツッコミが互いにミックスアップ、競い合って成長しているようなライブ感があった。

「コレなんのボケ?」ってところにビシってツッコミのアンサーが来て、妙に納得してしまう説得力がある。

 

  • 和牛

流石、の一言に尽きる。落ち着いた入りから、少し過激なワードが出て心配になったが、後半のコント部分でそれらをすべて回収する、恐ろしい仕上がり。言葉が出なかった。

料理を作っていた水田が「ウー」って言い出したところが昨日のベストシーン。

4分の中でよくこれだけ無理なく詰め込めた。間違いなく、一番面白いネタだった。

 

しまった。一回の記事は1000字程度と決めていたのに。ファイナルについては明日書く。